医療法人 社団睦会
お知らせ
医療法人 社団睦会は、愛生病院をはじめ、住宅型有料老人ホーム、グループホーム、介護医療院等、様々な介護サービスを運営しています。
地域社会に貢献できる病院(医療と福祉)」を目指しています。
お知らせ
愛生病院
2024-4-1
権利擁護指針
権利擁護に関する指針
第1章 目 的
(目的)
第1条
本指針は、医療法人社団睦会(以下「睦会」という)における患者・利用者(以下利用者)に対する身体的拘束廃止の体制の整備と、虐待防止に取り組むことにより利用者の権利を擁護するとともに、利用者が医療・介護サービスを適切に利用できるように支援することを目的とする。
第2章 理 念
(理念)
第2条
睦会では様々な疾病や障害、認知機能の程度、その他周囲の環境等にかかわりなく、誰もが有している基本的人権を侵すことがないよう、利用者の尊厳と主体性を尊重した医療・介護の提供に努める。
第3章 組 織
(組織)
第3条
- 睦会では利用者の身体的拘束廃止に向けた取り組みの推進及び虐待発生防止に努める観点から「権利擁護推進委員会」を設置する。
- 設置目的
睦会の全ての利用者が尊厳を保持した生活を継続していくために、本人に関わる全ての人が「尊厳の保持」を理解し、たとえ本人が自分の意志を周囲の人に十分伝えることができない状態にあったとしても、本人の自立したその人らしい生活を支えるケアを確立し、質の高いサービスを実践することを目的とする。
2)活動内容
睦会での身体的拘束廃止に向けての現状把握及び改善の検討
睦会での虐待発生防止に向けての現状把握及び改善の検討
身体的拘束廃止および虐待発生防止に関する職員全体への教育
睦会において虐待が発生したと覚知した時など必要に応じて臨時委員会を開催する
身体的拘束廃止および虐待発生防止のための取り組みのためのチームを設置する
- 構成員
- 委員会の開催
定期開催月 4月、7月、10月、1月
第4章 身体的拘束
(身体的拘束廃止に関する基本的な考え方)
第4条
身体的拘束は利用者の療養及び生活の自由を制限する事であり、利用者の尊厳ある療養及び生活を阻むものである。睦会では、利用者の尊厳と主体性を尊重し、身体的拘束を安易に正当化することなく、職員一人ひとりが身体的・精神的・社会的弊害を理解し、身体的拘束廃止に向けた意識を持ち、身体的拘束をしない医療・介護の提供に努める。
1 身体的拘束禁止の規定
本人又は他者の生命又は身体の安全を確保するため、緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束およびその他の利用者の行動を制限する行為を禁止する。
2 緊急・やむを得ない場合の三つの要件
身体的拘束は原則禁止としているが、緊急・やむを得ず身体的拘束を行う場合は、以下の三つの要件の全てを満たす状態であることを関係者で検討し、記録に残さなければいけない。また、早期の身体的拘束解除に向けての介入及び検討をしなければならない。
切迫性 :利用者本人又は、他の利用者等に生命又は身体が危険にさらされ る可能性が著しく高いこと。 非代替性:身体的拘束その他の行動制限を行う以外に代替する介護方法がない こと。 一時性 :身体拘束その他の行動制限が一時的なものであること。
|
3 身体的拘束禁止の対象となる具体的な行為(身体拘束廃止・防止の手引より)
- ひとり歩きしないように、車いすやいす、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。
- 転落しない様に、ベッドで体幹や四肢をひも等で縛る。
- 自分で降りられない様に、ベッドを柵(サイドレール)で囲む。
- 点滴・経管栄養等のチューブを抜かない様に、四肢をひも等で縛る。
- 点滴・経管栄養等のチューブを抜かない様に、または皮膚をかきむしらないように手指の機能を制限するミトン型の手袋等をつける。
- 車椅子・椅子からずり落ちたり、立ち上がったりしない様に、Y字型抑制帯や腰ベルト、車椅子テーブルをつける。
- 立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げるような椅子を使用する。
- 脱衣やオムツ外しを制限するために、介護衣(つなぎ服)を着せる。
- 他人への迷惑行為を防ぐために、ベッド等に体幹や四肢をひも等で縛る。
- 行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる。
- 自分の意思で開ける事のできない居室等に隔離する。
4 身体的拘束がもたらす弊害
- 身体的弊害
- 精神的弊害
- 社会的弊害
- QOLの低下に直結することになる。また、睦会に対する社会的な不信、偏見となること、職員の士気の低下につながる。
5 日常の医療・介護における留意事項
身体的拘束を行う必要性を生じさせないために、日常的に次のことに取り組む。
- 利用者の尊厳を守り、利用者主体の行動になるよう心掛ける。
- 言葉がけや対応が利用者の自由(身体的・精神的)の妨げにならないよう注意する。
- 利用者の思いを汲みとり、利用者の意向に沿ったサービスを提供し、多職種協働で 個々に応じた丁寧な対応をする。
- 「やむを得ない」と安易に身体的拘束を行っていないか、利用者が主体的に生活できるよう支援できているか常に振り返える。
(身体的拘束を行う場合の対応)
第5条
緊急やむを得ず身体的拘束を行わなければならない場合は、以下の手順に従って開始する。
1 カンファレンスの実施
身体的拘束等が必要と考えられる事態が発生した時は、関係者が集まり「切迫性」「非代替性」「一時性」の三要件を満たしているかを含め妥当性を検討しする。
身体的拘束を実施している間は、身体拘束解除に向けたカンファレンスと解除に向けた取り組みを実施する
2 医師の指示
身体的拘束を実施する時は医師の指示のもと実施する。
身体的拘束の内容・目的・理由・拘束時間又は時間帯・期間・場所・改善に向けた取り組み方法を詳細に説明し、同意書の署名をもって同意を得た上で実施する。
4 記録と再検討
法律上、身体的拘束の記録は義務付けられており、緊急やむを得ない身体的拘束に関する記録をカルテに必ず記録する。記録は、患者の状態、カンファレンスの内容、患者、家族の同意の有無を記録する。
5 拘束の解除
利用者の状態及びカンファレンスでの検討の結果、身体的拘束をする必要がなくなった場合には、速やかに拘束を解除する。 その場合は医師の指示のもと解除を行い、本人、家族に説明をする。
第3章 虐待
(虐待防止に関する基本的な考え方)
第6条
虐待は人としての尊厳の保持および人格の尊重に深刻な影響を及ぼす可能性が極めて高く、
虐待の防止のために必要な措置を講じなければならない。当法人の職員として常に虐待に対する意識を持ち、虐待は人権侵害であり、犯罪行為であると認識し利用者への虐待を行わないことはもちろんのこと、予防及び早期発見に努める。
1 法的根拠 (虐待に関する法律)
- 高齢者虐待防止法:高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律
- 障害者虐待防止法:障がい者虐待の防止、障がい者の養護者に対する支援等に関する法律
- 児童虐待防止法:児童虐待の防止等に関する法律
2 虐待の種類
- 身体的虐待:暴力的行為によって身体に傷やアザ、痛みを与える行為やが言うとの接触を
意図的、継続的に遮断する行為
- 心理的虐待:脅しや侮辱などの言葉や態度、無視、嫌がらせ等によって精神的に苦痛を
- 性的虐待 :本人が同意していない性的な行為やその強要
- 経済的虐待:本人の合意なしに財産や金銭を使用し、本人が希望する金銭の使用を理由
なく制限すること
- 介護・世話の放棄・放任:必要な介護サービスの利用を妨げる、世話をしない等によ
り高齢者の生活環境や身体的・精神的状態を悪化させること
3 虐待の早期発見・早期対応
「虐待」をしている人は、行っている行為が虐待にあたると自覚していない場合も少なからずあるが、その行為を受けている利用者は何らかの影響を受けている。些細なことであっても積み重なることで大きな影響を与えることになったり、その行為が徐々にエスカレートしていくこともある。利用者にとって良かれと思って行っている行為が「虐待」にあたらないか常日頃から、自らの行為を振り返ると同時に他者に対しても声を掛ける等、虐待の早期発見・早期対応に努める。
被虐待者は介護に依存する割合が高く、自ら虐待の事実を告白しにくい状況となっている。
虐待者の中には、自分のしている事は悪いこと、いけないことと感じ孤立感を深めていく場合もあり、その結果他者の援助を求めることができず、むしろ、援助を拒否することによって虐待の事実を隠すようになる傾向もある。虐待者自身が抱えている問題(例えば介護疲れ等)を解決することが虐待防止につながることもあり、利用者および家族を含めた介護者と接する機会が多い医師、看護師、介護職員、介護支援専門員、リハビリ職員等は、虐待に関する意識を高め法人全体で対応できる体制が重要である。
4 虐待の程度と対応方法
虐待に対する対応のポイントは、被虐待者の安全確保を優先し、常に迅速な対応を意識する。また、必ず組織的に対応し、関係機関と連携をとることが大切である。
・緊急事態:被虐待者の生命に関わるような重大な状況を引き起こしており、一刻も早く介入する必要がある状況
対応策➡状況に応じて警察や救急に連絡したり、やむを得ない措置等により被虐待者を緊 急避難させることも必要
・要介入 :放置しておくと被虐待者の心身の状態に重大な影響を生じるか、そうなる可能性が高い状況
対応策➡専門職等のネットワークによる問題解決が必要
・要見守り・支援:被虐待者の心身への影響は部分的であるか、あるいは顕在化していない状況。知識不足等により不適切な介護になっていたり、長年の生活習慣の中で生じる言動が虐待につながりつつあると思われる場合がある。
対応策➡虐待かどうか迷うこともあるが、放置することで深刻化することもあり、見守り、声かけの支援が必要
(虐待の相談・通報受理)
第7条
本人・介護者・家族等からの相談や通報は、虐待発見の大きな情報となる。
しかし、最初の対応を誤ると虐待把握の機会を逸することになり、その後の介入が困難になったり、虐待を止めることができなくなることもあるので、慎重かつ丁寧に相手の相談したい内容を引き出しながら対応しなければいけない。
1 相談を受ける際の基本的姿勢・留意点
1)本人がどの様なことを訴え、相談したいのか、困っていることは何か、どのようにして欲しいと考えているのかを中心に「誠心誠意傾聴する」ことが大切であり、相談者を責めるような対応にならないよう注意をする。
2)一度の相談で解決しないことも多くあり、 聞き取り調査をされたという印象を与えるとその後の相談が途絶えることもある。「十分に聞いてもらえた」「相談できる場所ができた」という安心感を相談者が得られる対応を心掛ける。
3)第3者からの相談に対しては匿名性が守られることを伝え情報を得た上で、事実関係を確認する。この場合無理に聞き出すことは避け、信頼関係を築いて自主的に話してくれる様な状況を作ることも大切である。
4)相談内容に関してはプライバシー保護と情報管理には十分な注意を払う。
2 成年後見制度の利用支援
利用者及びその家族に対して、利用可能な権利擁護事業等の情報を提供し、必要に応じて行政機関等の窓口、身元引受人等と連携の上成年後見制度の利用を支援する。
3 相談・通報受理時の対応
相談・通報を受けた者は、虐待相談票に記載し速やかに部署長に報告する。部署長は虐待相談票を権利擁護委員会に提出する。
(虐待が発見された場合の対応)
第8条
相談、通報等により虐待が発見された場合は前条にしたがい速やかに対応し、必要に応じ関係各所に連絡をする。
職員による虐待が発見された場合も同様に、速やかな対応と権利擁護委員会に報告をする。職員に対しては十分な調査を行った上で必要に応じ注意・指導、並びに就業規則に従った処分を行う。
第4章 職員教育・研修
(職員教育・研修)
第9条
利用者に携わる職員に対して身体拘束・虐待等権利擁護のための職員教育・研修を実施するほか、外部研修に積極的に参加する等し、権利擁護とサービスの質の向上を目指すよう努める。
1)定期的な教育・研修
2)新任者に対する教育・研修
3)その他必要な教育・研修
第5章 規程の閲覧
(権利擁護に関する指針の閲覧および公開)
第10条
この規定は職員、利用者及びその家族をはじめ外部の者に対してもいつでも閲覧できるようホームページに公開するほか、各部署に備え付ける。
附 則
1 この指針は、令和6年4月1日から施行する。
2 この指針の施行にあたり、身体拘束・虐待等権利擁護に関する規定を廃止する。
3 この指針の施行前により取り扱った身体拘束・虐待等権利擁護に関することについては、なお従前の例による。